Cosmicle

世界はかくも矛盾で溢れているのか

近距離のまほう

 

 

 

近距離って厄介だな、と思う。

 

 

近付きすぎると、それまで見えていたものが一気に視界から外れて、目の前のものしか見えなくなる。長所も短所も、近付けば近付くほどその一点が誇張されて映ってしまう。

近距離を題材にした映画があった気もするし、愛は裏腹で恋は盲目、なんて誰かが歌っていた気もする。よくある言い回しではあるのだが、

結局のところ、近距離は厄介なのである。

 

 

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 私が彼を好きになるきっかけは2007年の復活コンサートだった。決して近くはない席で、初めてのコンサートに委縮していた私の心にとびきりの笑顔で飛び込んできた彼。こちらのブロックに向かって笑顔でブンブンと音が聞こえそうなくらいに大きく手を振っていた。典型的な集団ファンサであったのだが、物理的な距離を埋めてしまうようなキラキラの笑顔が眩しくて、可愛らしい彼が大好きになった。

 

 

 次に近くで見たのは、ユニット3rdライブの地方会場だった。マスコットであるクマさんの動線上でもあったことから、運良く手を振ってもらった。数年前と動作は変わらないのに、距離が近づくだけでこんなにも嬉しいものなのかと思った。近くで見た笑顔の彼は、手を伸ばせば届きそうな距離なのに、手を伸ばすことすら億劫になる程綺麗で可愛らしかった。

「これがアイドルのまほうなのか…!」と感激しつつも、クマさんに乗ったまま颯爽と去って行った魔法使いの背中をただ見つめることしかできなかった。

 

 

 2012年のイベントは人生で一番物理的な距離として近かったかもしれない。秩父宮のあの感動的な公演から6日後ということもあり、興奮醒めやらぬまま会場に向かった。

正直言うとこの時のことはかなり忘れているのだけれど(記憶力の乏しさ日本代表)、目の前でわちゃわちゃしている彼らを見られただけで、今人生で一番幸せだと思えた。こちらが手を伸ばせば届く距離なのに、アイドルの方から手を差し出してくれるなんて、と軽くパニックだった。

アイドルオーラ全開の手越さんに戸惑い、シゲって本当にお髭濃いんだなぁ!かわいい!!と思ったことだけは鮮明に覚えている。

 

 

 

 

でも違和感を感じ始めたのもこの頃からだった。

 

 気づけば、彼のソロ曲はポップで可愛いダンス曲からEDM調やクラブミュージック系のダンスナンバーに転向していた。私は彼に特別なかっこよさを求めてなかったのもあって、彼の魅力を見失いつつあった。嫌いではない。かといって大好きもどこかに忘れてきてしまったようで。

彼を否定するようなことは言いたくなかったが、笑顔少なにガシガシ男らしく踊る彼は、はっきり言って好みではなかった。 何回曲を聴いても声を聴いても、その後に可愛らしい笑顔を見ても、どんなに面白いトークをしていても、あの時手を振ってくれた、私が好きになった彼を見つけ出せなくなっていた。

 

どちらが本性なの、なんてのは野暮で、どちらも私が好きだった"彼"であり、それでいてどちらも彼の”一部”でしかない。それを頭では理解していたのに、どうしても素直に受け入れることができなかった。

 

 

 

 

 

 

 そして先日のQUARTETTOツアーでは、私は加藤さんファンとして参戦した。

アイドルのコンサートでは目に入る全ての情報が美しくて、瞬きが惜しいなんて何度でも思ったことがあるけれど、今回も例に漏れずそう感じた。

 

 

そんな中ある曲の終盤、回転するセンターステージの上で会場を見渡すように空を見つめていた彼が、こちらから顔が見えなくなるギリギリの一瞬にふっと顔を綻ばせた。

肉眼でその笑顔を見た時、どこか懐かしいような、それでいてすごく新鮮なような感情を覚えた。もっと近い距離で見たこともあるはずなのに、今よりもっと大好きだった瞬間があるはずなのに、彼の一瞬のその笑顔が今まで見てきたどんな彼よりも可愛くてかっこよくて、神秘的で、鮮やかで輝いて広…くて(?)、とにかくとびっっきり魅力的に見えた。

 

 

自分が一番驚いた。すっかり離れてしまっていた気持ちが、一瞬にして引き戻されたのだ。

激しく踊る曲でも、不意に見せる男性の顔でも、随分と面白くなったトークでもなく、まっすーの笑顔によって。

 

ああ、私は近付きすぎていたのかもしれないと思った。近付きすぎて勝手に彼の良さを見失い、"変わってしまった増田貴久"という好きになれない存在を自分で無意識に創り出していた。

 

 

 彼らが覚悟を決めたあの日から、彼らによって多くのことが塗りかえられ、美しい思い出に変わっていった。

その一方で私は、徐々に大人の魅力を解禁させていく彼が怖かったのか、置いて行かれるのが怖かったのか。追いかけて追いかけて少しでも近付こうともがく私に、冷静になれよって修二が言ってたのかもしれない(笑うところ)。

それまで私の中で混沌としていたものが、一気に晴れるような気がした。

まっすーの笑顔は本当に魔法だった。

 

 

 

きっと彼自身の根本にあるアイドルとしての在り方や、彼のファンに対するホスピタリティやありがとうの気持ちは何も変わっていないのだ。

あの時とは少し距離を置いて見た増田貴久さんは、担当していた時とはまた違う、それでいて変わらない魅力を併せ持っていた。 近距離のままでは気付けなかった。

 

 

近くて遠いNEWSと見る景色は今も昔も絶景であり、変わったと思っていた増田貴久さんは変わらずそこに存在して、役目を全うし続けている。

 

しかしNEWSに追い風が吹いている今、現状維持では駄目なのだろう。加藤さんの言うとおり、4人になって4年目の今年。さらなる飛躍の為にも彼は変化するべきであり、グループとしても変革の時期を迎えている。

 

これから彼の創る偶像が私の嗜好と合致しなくても、現状で"いちばん"じゃなくても、どうやったって増田さんを嫌いになんてなれないのである。むしろ大好きだわこんにゃろ!!

 

 

 

 

増田さんは磨きに磨いた20代を大切にショーケースに入れて、今日から30代を履いて歩いていく。これからどんな道程になるかわからない。一歩一歩、ゆっくりでもスキップでもいい。できればもっと遠くまで行ってほしい。届かないところからいつも近くにいるよって微笑んでほしい(我儘)。

 

 

稚拙な文章故に長くなりましたが、

増田貴久さん、お誕生日おめでとうございます。

これからのあなたにどう魅せられていくのかとても楽しみです。

 

ずっと、ずっと大好きです。

 

 

 

 

 

 

 

 

と、ここまでこんなに増田さんへの重い愛を語っておいて、あの日見た加藤さんがあまりにも美しくて、尊くて、横顔が最高のファンサ…!!なんて本気で思えてしまうのだから、

 

 

 

やっぱり近距離は厄介なのである。